√yūto #04 絆

屋敷よりもホテルはガードが高い。
ま、セキュリティが最高なのはこの際認める。



そして一瞬の隙もない。


監視役トイレお風呂の前までついてくる

極め付けに眠る時も傍に立っている


眠れる訳がない。。。


見事にカタチだけ"悪ガキ"

結局やってる事は真面目にお勉強で"良いコ"



…滑稽すぎる。



せめて学校ぐらいは行かせて欲しい…
いや、今はあんまり行きたくないや…


通学はしていないものの、

勉強に遅れが出るといけないとの指示で

からまで家庭教師が入れ替わりで指導する


生き地獄よりもお化け屋敷のほうが恋しくなった;




お風呂に浸かりながらボーっと天井を見て、
やんなきゃよかったかなーってちょっと後悔した。


すると天井がガサゴソし、その瞬間



ストーンッッ!!!!



天板がボクの顔に落下した。


『イッテぇ…欠陥かよ…』

そう小声で呟きながら上を向くと、



「よっ!友人♪ シーッ!!」



兄…さん??


スルスルとロープ強度並の蜘蛛の糸が舞い降りた。


よいしょ…よいしょ…よいしょ…



-天井裏-


『兄さん、スパイじゃないんですから!!』


兄さんは、お得意の悪戯な笑みを浮かべて

「お前にも本物のスリルってモンを味わせてやる♪」



ありがとう、あなたはボクのメシアだ。

勿論、今だけ



兄さんのコートを羽織り薄暗い天井裏を這っていく。


『でも兄さん…ボクなんか助けても兄さんの得にならない筈。
 なのにこんな危ない真似までして一体何が目的ですか?(¬_¬;)』



ソレはボクが忘れていた兄さんにとっての当たり前の事だった。


「あの家にお前が居ねーと不便だし、つまんねーんだよ。
 当て馬がオレ独りじゃ張り合いがねーし。」



兄さんが空気口を開けると、
眼下に地上25階建ての夜景が広がった。
そしてゴンドラが待機していた。


「うっひょー!ちょー気持ちイイ♪♪
 何だ?友人、早く乗れよ?また捕まるぞ。」



ボクにとっての最大のスリルが待ち構えていた



『兄さん…ボク、

 高いトコダメなんです…(泣)』



哀れな姿でいつもより二回りくらいちっこくなるボクと、

「うっひょー!!絶景かな絶景かな♪」と、

興奮が止まない兄さんはゴンドラで屋上へと運ばれた



!? ...ゴシ(つд⊂;)ゴシ... !?


『兄さん、お約束なんで一応聞きますがコレって…』


「お前バカか?唯のヘリだろ。
 さっさと乗らねーと置いてくぞ!!」


このヘリコプター…うちのじゃないよな…

"HANANOME"…まさか闇の組織とかじゃ…

コヤツはボクどころか世界まで征服するつもりか…?

しかし一体…何処へ連行されてしまうんだろ。。。



高所恐怖症のボクは案の定、気絶し
ヘリが着陸した所で兄さんのキツいエルボーで起こされた。


『あのココ…何処でしょうか?』


郊外の膨大な土地に作られた、

まるで三音庭園の様な景色

そして歴史がありそうな古い建物



「オレの本当の母さん家。」



灰混兄さん立場ではボクと一緒だった


兄さんの奇行はパパの前妻

そう、兄さんのママのせいにされていた

でも兄さんはボクという鎧を身に着けた

そして決められた運命の中で

付加価値を使う事により

自由楽しみ手にした

そしてボクにその"借り"を返しにきたんだ。


ボクより先に兄さんはあの屋敷に堪えて

ボクが来た事で更に背負うものが増えた

兄さんはずっと、堪えていたんだ



兄さんのママにお逢いするのは今回が初めて


ちょっと緊張する…しかも…

まだ全裸にコートのままだし…っておい!!


「母さーん!!!!」


兄さんが山に向かう様に雄叫びを上げる

そして両手を上げたまま走って兄さんのママに抱き付いた

トドメによしよしされながら無邪気に喜ぶ姿


兄さんってこんなキャラだったっけ;



そんな微笑ましい兄さんたちを見ながら、

何か懐かしい温かい記憶が頭を過った。



「あー母さん、アレ弟。」


ヒトに指を差した上"アレ"扱い

ちょっとでも見直したボクが浅はかだった…


灰混兄さんのママは、

兄さんの(下劣な)イメージとは懸け離れた、

着物姿が似合う優しそうで気品高い方だった。



『ぁ…申し遅れました。わたくし、陸咲友人と申します。
 灰混お兄様のお母様、お初にお目に掛かります。』


少しジッとボクの眼を見つめたあと、お母様の顔が綻んだ。


「クスッ… やだ…御免あそばせ。
 何せお初にお目に掛かるにしては、
 随分と大胆なご格好をしていらっしゃるんですもの(笑)」



自分の状況を忘れていました Ω\ζ°)チーン



「灰混、まさに貴方の弟って感じね。
 まぁいいわ、着換えを用意させるから早くお上がんなさい。」



友:『お着物…なんて

   お互いお久し振りでございますね、お兄さ…ま。。。』


灰:「プッ、趣味の悪いあの女の服より余っ程、男前だぞお前(笑)」



御膳を頂いた後、兄さんのママがボクと二人で話したいと仰り、

とても気まずいムードの中、会談をさせて頂きました。



「友人君、単刀直入に言うわ。
 私、灰混の事を引き取りたいと思っているの。
 その件で、貴方にも私の力になって欲しいの。」



イキナリのシュールな展開に驚かずにはいられなかった。


ボクのパパ、陸咲玄之助は

兄さんのママの一族華芽(はなのめ)財閥の一部と統合し

陸咲財閥が事実上の吸収合併を果たしたそうだ。

何れは残る現・華芽財閥の吸収を目論んでいるとの事。

そして華芽財閥を守るためには

跡取りとなる灰混兄さんの存在が必要なのだとボクに話した。



『お言葉ですが、灰混様のご意志はお聴きですか?』

正直、ボクは同士が居なくなるのがイヤだった。


「数年前から話しているわ。
 けれど陸咲家の居心地がいい様子で。
 あの子、本当は酷い目に遭っていないかしら?」


兄さんには心配してくれる親がいる

それはボクにとっては当たり前じゃなく

欲しくて願っても届かない大きな存在だ。



『ご安心ください。灰混様を悪くする者は御座いません。
 それにわたくしも灰混様を兄として心からお慕いしております。』


気を悪くさせただろうか。

でも、ボクの気持ちだけは本当だ



「そう、判ったわ。ありがとう。
 それなら私からも貴方に一つ提案を差し上げたいんだけど…」




-数十分後-



灰:「終わった?」


友:『うん。。。』


灰:「つまんねー事でゴメンな…」


友:『いいんです。兄さんは気になさらないでください。』



ボクの事は全部調べられていた。

生い立ちから、園に居た頃陸咲家に引き取られてからも全部


そして兄さんのママがボクに差し出したモノ


ソレはボクの望みを一つ叶えてくれるという事。

ソレはボクをまた園長先生の下へ帰してくれるという事


甘い蜜にボクは揺らいだ。

本当は帰りたい。でも帰らない。


陸咲財閥華芽財閥も結局は全部お金じゃんか…

お金が総てじゃんか…

そんなお金で園長先生のトコなんて帰れない


そんなコトしたら園長先生が…


園長先生が…


悲しむじゃんか…



灰:「友人、もし母さんがお前に変な事言ってたら謝る。

   すまん、お前にそんな顔させるつもりはなかった…。」


友:『違います! そんな事は一切ありません!!
   ですが…兄さんはこのお話を前々から…その…』


灰:「あーっ、どーしよっかなー。」


友:『兄さんは、どう思ってるんですか?』


灰:「どーでもいい。もう結構遊んだし。」


友:『あの…』


灰;「何だよ?ぁ、オレが居なくなったらボク寂し~とか?」


友:『いえ…何でもありません…』


昔からいちいち嫌味なオトコだ。
でも…御名答です;



この時ボクが素直に言えばよかったんだ。


どうしてボクらはこんなにも、
オトナたちに振り回されてしまうんだろう。



友:『兄さん…』


灰:「何だよ!! さっきからキメぇなぁ。

   言いたい事あんならハッキリ…」



友:『コレからもずっと、

   ボクの兄さんで居てくれますか?』



灰:「何そのオチ…やめろよンなの…当たりめぇ…じゃん…」


友:『その言葉を頂けてよかったです。』



兄さん、ボクは兄さんと同じ両親の下に生まれたかった

そしたらずっとこんな風な"普通の兄弟"で居られたのに…。




『もしもし、夜分遅く申し訳ありません陸咲友人です。
 パパ…いえ、社長にお話ししたい事が在るのですが。』


パパに会うのは久しぶり…というか

小さい時からもちょこちょこしか本物を見た事がない

半ば生きてるのかさえ判らないけど、

金が動いてるのが何よりもの生きてる証拠だ。


「おお友人!お前まだそんな恥ずかしい頭して、
 周りの連中も非行に走ったと専ら騒いでるぞ!」


その件に関しましては今日は触れないでください
 今日はボクの事ではなく、兄さんの事で来ました。』


パパは既に察していた。

誰一人、パパに敵う訳がない。


「灰混は帰したよ、華芽家にね。
 凡人が許しを請いても届かないポストを手にしながら、
 何が不満で気に入らないのやら…
 可愛げもない上に紫苑にも懐かなかった。
 手ばっかり焼かせやがって困ったもんだ。
 それに今更アイツが華芽に戻った所で何も変わらん
 華芽財閥は来年にも我が陸咲財閥の全傘下に入るのだからな。
 つまりあの当て馬はもう用済み唯のゴミって事だ。」


来るのが遅すぎたか…

違う、パパは最初から計算していたんだ。


水面下で談合が進み既に華芽財閥は終焉に向かっていた



ゴメンなさい、兄さん…
ボク、結局何もしてあげられなかった…



「因みに友人、お前も覚えておけ。
 

 お前自身が一番判っているとは思うが、
 タダ同然のお前に、俺は幾ら投資したと思う
 

 せめて不良債権にだけは成るなよ。 

 

 そしてもう一つ、今後もし俺の邪魔をする様なら


  お前も灰混と同じ様に、


 いつでも直ぐに消せるって事をな。」


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