√episode:0 #09 二つの奇蹟

-翌年-


ベランダから見える水平線から陽が沈む頃だった。



私も浅黄にとっても初めての経験であり、

お互いが不安の境地に居た。


時間は刻々と過ぎ、浅黄の身体は限界に達している。

メスを入れるにせよ、既に危険な状態であった。



「もう、神頼みしかない…」その瞬間だった。



沈静な新月の夜に、大きな産声を上げる。



浅黄も荒げていた息が落ち着き、

幸い、血圧も脈も安定している。



「おめでとう」



共に涙を浮かべながら手を取り合った。



そして私はもう一つの奇跡と遭遇した。


私と浅黄の間に産まれたのは男の子。

そして双子の兄弟だった。


憶えているだろうか。

そう、"クロスイエロー"を話を。


"プライマリー""セカンダリー"に別れし力。

不運にもその巨大な二つの力の宿主として生まれた浅黄


そして一つであった"パーソナル・トリガー"の浅黄が

本来在るべき二つの形へと生まれ変わらせたのだ。


同時に父となった私も、

まさか二人の子宝に恵まれるとも思わず

浅黄にそっくりな我が子たちを其々抱きながら、

絶える事のない喜びに満ち溢れた。



彼も早速報告をした。


画面を突き破りこちらへ出てくるかの様な勢いで、

「やったー!」

と男泣きをしている姿を見て思わず

『やめてくれ』と照れ笑いをしてしまった。


願わくば、彼の手に取らせてあげたい


ありがとう」と私に泣きながら言い続ける彼に、
私も『ありがとう』と心から感謝の意を伝えた





それからの生活と言えば、

てんやわんやである。


お互い初めての子育てで、更に子供は二人


浅黄まるで、

パパとママを兼任しているかの様だった。


子供の名は、浅黄"黄"に準えて

長男透黄(とうき)
次男有黄(ゆうき)と名付けた。



1歳半が過ぎた頃、

本当に豊かな個性が出始めた。


長男は大人しく次男はヤンチャ坊主。

二人とも甘えん坊で研究も碌に出来ない。



2歳半を過ぎると、

自由に歩ける様になったら狭い家が息苦しいのか
二人で勝手に外に出ては森の中へ行ってしまい、
夜な夜な浅黄と探し回る日もあった。


どんな時でも二人は一緒で、

そして一緒に叱られては泣いていた



透黄は浅黄にベッタリとくっ付き、

有黄は私の傍から離れようとしない


そして有黄はこっそり私の実験室に入り込み

いつからか彼の遊び場になってしまった。


こちらのモニタだけを切り

地球の彼にも元気に育つ子供の成長を見守ってもらった



私は今、
人生で一番幸せな時間を生きている。