√episode:0 #03 生物化学兵"士"

私は秘密裏に、

スフィアとの交信を行なっていた。



プライマリーの研究を進める中で、

私は或る例外の法則を見つけたのである。


RGBと呼ばれる遺伝子を組み換え

擬似的イエロー合成を試みた時だった。


研究自体は失敗だった。

だがその時、私は僅かながらの次元の歪

そう、ゲート・ペリフェレイアを開いたのである。


時同じくしてスフィアで研究をしていた、

私と瓜二つの男と遭遇した。


互いに鏡に映った自分に驚いた様な出来事

今でもとの笑い話である。


しかしながら実際に行き来が出来る程、

実用性のある大きさではなく

まるでピンホール越しで、互いに研究を行なう日々だった。



スフィアの私から聴いた話によると、

スフィア側の次元変動が近年盛んである事から

近い内に大きな扉が開かれる可能性がある。


破壊再生を繰り返してきたこの世界。

そして私はその奇跡的現象との遭遇を目前にしていた。


妻の浅黄にも隠し通していた。


きっとこの事を知られてしまったら、

私は酷く恨まれるだろう。


いや、恨まれるだけなら私自身は構わない、

浅黄が平和に暮らせるのならば。


しかし私は妻と出逢った時から、

百も承知で彼女を巻き込んでいたのには違いなかった。



当然、研究室には鍵も掛けている。

といっても、浅黄は私の研究の邪魔になる事を嫌う。


私は彼女の信頼に疑いを掛けている訳ではない

何より私の真実を知られる事が怖かったからだ。


何故ならそこは"研究室"ではない


スフィアロイドというテロリストと交信し、

神紛いの事を行なう犯罪組織の"アジト"である。



私は浅黄の異常ともいえる回復力を解明すべく、

彼女から摂取した細胞組織のデータを

スフィアの私と介し合い、供に解析を行なった。


そして私達は自ずと神の領域に達しようとしていたのである。



彼女の"血液型"

以降は我が世界の標準に基づいて"RGB"と記載する。


彼女のRGBはY属性特異型で、

"TYPE-Y(別名:カラーレス)"と呼ばれる。


Y属性も且つては、

"C""M"に続く三大属性(メイン)とされていたが

トリガーの進化の過程で、

RGBの生成に殆ど必要のない"Y"をメインに持つ者は減少していった。


"TYPE-Y"は、その進化の過程で誕生した新種のRGBとみられ、

メインとの互換性がなく、更に人体にて"Y"のRGBが整合されない

別名の通り"カラーレス"とも呼ばれる極めて珍しい属性である。


この属性の者は、先述のメインと比べ、

身体の成長が遅い傾向があり

現代医学では第三者のRGBから"Y"を補う他、術がない


また必要以上に"Y"を接種してしまった場合

後述する病を引き起こすリスクが高いとされる。


"TYPE-Y"である浅黄は、

各RGBで免疫的役割を行なう"K"の遺伝子異常による

"CODE:000000(コード・シックス)"と呼ばれるRGBエラー(血液病)の一種で、

正常なメインRGBを"K"に染色され、

何れは身体機能を正常に保てず死に至るという難病に侵されている。


この病の一番の問題は、体液による接触感染が著しく、

患者と第三者のRGBが接触した場合

エラー化されたRGBは第三者へ送り込まれると同時に

患者の不足するRGBを第三者から取り込むという連鎖反応だ。


他者からのRGBを必要とする"TYPE-Y"では、

本来有するべき"Y"を第三者の致死量に達するまで取り込む事から

"TYPE-Y"且つ"コード・シックス"の患者は、

原則、各国其々の治療施設への隔離が義務付けられている。


しかし上記の通り、症例少ないケースでの早期発見は難しい上に、

現在の治療法では"TYPE-Y"の特徴を逆転の発想から考案された

"Y"のRGBを投与を調整し、

敢て人体細胞の成長を遅らせるという対処療法のみであり

その適用は成人を迎えるまでの18歳未満に限定されている。


しかし浅黄は既に適用可能な年齢を超えており、

生涯、輸血によりRGBのコントロールを行なうという

延命治療以外の施しようがない。


そして隔離施設への収容が余儀なくされる。



私は或る日、彼女にその選択肢を告げた。


無論、浅黄はいつ訪る最期の日まで

私の傍らに居てくれる事を選んでくれた。



しかし夫婦である仲で、

彼女が私に対して潔癖なまでの接触に注意する姿を見る度


彼女が抱く、抱え切れない程の不安

どんな手段でもいい、少しでも解放してやれないものかと、

私は自分自身の遣る瀬無さに憤りを感じる毎日であった。