√kyo #03: ファースト・オペレーション

-学祭当日-


「よーっしゃ、スタンバイすっぜー!」



今しか言えない事がある。

『あ、ちょっとだけ…いいかな?』


「なんだよ、今更ビビってんのかよ(笑)」

彼がいつものペースで私に勇気をくれる。


『ありがとう…』



そして私にとって一世一代の言葉を彼は容赦なく吹き飛ばす。

「バカ…終わってから言え!」



初めて立つステージ。怖くなかった言えば嘘になります。


けれど、上手(かみて)に立つ、

彼の輝いている姿を見ると自ずと力が湧き出ました。


一刻、一刻と自身のソロが近づいてくる。

彼が笑顔で「大丈夫、イケる!」と私に訴えかける。



何度も何度も、彼は練習に朝まで付き合ってくれた日がありました。

ダメな所を指摘されては喧嘩して…それでも何度でも…


…迷わない、弾ける…


一心不乱に奏でた後のコールアンドレスポンス


私は本当に目が覚めたら一瞬にして消えてしまわないかと、

本当に疑ってしまう程の夢の様なステージでした。


しかし、夢は夢のままで居て欲しい

こんなにも眩ゆい程に彼らと共に輝けたひとときを壊したくない。


別れは苦手です。



私はステージが終わると、

直ぐにその場から離れようと廊下を歩いていました。


私を追う足音が聴こえる。


『すまない…でもやっぱりこのまま去るのは…』

そう立ち止まった瞬間でした。


ド────ン!!!!


てっきり彼だと思っていたら、

まさかのチビッ子が顔を抱えて悶えています。


『大丈夫…ですか…?』


妙に落ち着きのないチビッ子は、

必死に私へライブの感想を伝えると


「kyoさんのギター、オレ好きです!辞めないでください!!」


と、私にファンレター

ではなく

名刺を渡して慌てて逃げて行きました。



何だったんだ…今の…


すると後ろから聴き慣れた声がして振り向くと


「さみしーやつだなー。打上にも出ず逃げようなんてさ?」


大人気ない事をしようとした自分を恥じました。

でも、別れがツラくなるのはもっと嫌だったんです。


『ゴメン…何かもう全部終わったんだなって思っちゃって…』



「さっきのヤツには響いてたぜ?お前の名前通り(笑)
 終わってんなら今もう始まってるぜ?
 あとよ、俺らただのバンド仲間ってだけじゃないだろ?
 あーっ!俺ん事、ツレじゃねーとか抜かしやがるんかコイツ~!」



"楽しい"は"幸せ"。

それをひとときにするのも

恒久的なものにするのも

自分次第であるいう事を彼らが教えてくれました


そして今想うとあのブツかってきたチビッ子は、

まるで私の胸の内を、素直に話してくれていたのかも知れないですね。



-完-



で、終わりませんでした。