√sora #02: 夜逃げのMr.シンデレラ

「もう一度言ってみろ。」


もう三回も言ってるんですが。

『だから帝都に行くの。ソコでオレの可憐な蕾を開花させるのさ…』


そうやってオレがボーリング玉を投げたら、

まるでピンが投げ返される様におとうのビール瓶がオレを横切る。


「いいか、出来の悪いお前が困らん様にオレが作ってやった立場なんだぞ?

 おめーより必死に働いてる奴らがいっぱい居る中でだぞ?!」


ん?ちょっと聞き捨てならねーな。


『オレだって必死に自分のやりたい事目指して頑張ってんだよ!
 おとうが勝手に決めた事だろ?だったらソイツらにやらせりゃいいじゃんか!!』


殴られると思った。その後の顔の痣を心配した。



「出てけ…」


あっけらかんと、おとうは作業場へ戻って行った。


「ほら謝りに行きなさい、お父さんあんたの事心配してんだから…」



オレは衝動的になると一直線に走ってしまう。

ソレも多分、おとうの血を受け継いでいるからだ。


帝都なんて行った事がない。

ましてや住むトコさえ決まっていない。


そんな事、どーでもよかった。

ただ、もうココには居られないと思ってオレは家を出た。



バイト先で前借りした給料で夜行バスのチケットを見て、

少し心を痛めた。


でも後戻りだけはしたくない。


あの時、おとうがオレを殴らなかったのは

きっとオレに失望してしまったからだ。


だったら見返してやるよ。


テレビに出てビックリさせてやるよ。



そう思わなけりゃ、

このどーしよーもなくちっぽけな心が保てなかった。