√sora #01: 遅咲きの高嶺の花

"見返してやる… 絶てぇー伸上ってやる…"



オレは晴田空

文字通り天晴れで元気だけが取り柄。


因みに実家は大工やってて、おとうが頭。

でもってオレは一人息子で、

勝手にポストが作られて育てられたって訳。


ガチムチな男だらけ

汗やニオいで悶々とする中

汚れた作業着で下劣な会話が木霊する。

そんな環境が堪らない程好き…


ではなくキラいだった。



「ちょっと空、いつまでお風呂入ってるのー!?」


人間、ハタチ超えると男も女も一緒。

劣化の一途を辿るばかり。

こんなカワイイ顔に髭なんか生やして、

ましてや全身ボーボーだなんて知られたら一貫の終りだ。


バイトで稼いだ金は全部自己投資

今アッチで怒鳴ってるBBAが、

この前無断でオレの高い化粧水を使って大喧嘩したのも記憶に新しい。


油断大敵、安物を使えばおかんみたいな安物の顔に。

何もしなけりゃおとんみたいな男クサい…あーあーあ~ア゙ッー!!!!



「またそんな年甲斐もない格好してー。あんたもいい年なんだから~」


黙れKSBBA。

『行って来マ~ス♪』



ぅゎ煙っ…せっかくのおにうの服が汚れちゃうじゃねーかよ。。。


「空!! またそんなチャラチャラした格好して!何処行くんだ!?」


出ましたよ反面教師。

『るせーな!バイトだよ!おとうには縁のないお洒落なカフェ~♪』


すかさずドリルより煩い怒鳴り声が響く。

「お前そんな事言ってホストとかやってんじゃねーんだろーな!!

 判ってんのか!? お前はオレの後を継ぐんだぞ!?」


ご察しの通り更々その気はない。


あんな土と共に掘り起こされる雑草の様な連中ではなく、

オレは高嶺に咲く一輪の花…そう、気高く美しい…


ま、正直ガテン系もキラいではない

オレのキャラには合ってない。


昔からチビッ子呼ばわりで苛められっ子で、

いつも地味~なポジションで生きてきた。

しかーし!今のオレは違う。


「空君ってカーワイイ♪まるでオンナノコみたい♪♪」


ふふ、バカにするな(笑)

おめーらよりカワイイっつーの!!



人間って本当に判りやすい。

学生時代、赤点だらけの底辺で居たオレでさえも、

ルックスが良くて愛想が良ければソレだけで通る。


そう、結局はアイドルと一緒。

そしてオレはいつ訪るやも知れぬチャンスを密かに待ち構えている。

カワイイだけではない。

そう、オレには天性のスター・オーラがあるのだ。



この中都の駅前カフェには帝都からの業界人がうようよ居る。

バイトしながら営業活動。オレって本当に天才すぎて怖い。


『いらっしゃいませ~♪♪』


1オクターブ高い声でまず獲物を油断させる。


そしてすかさず相手の眼を5秒間ガン見

『あっ、すみません…失礼ですがテレビでお見掛けした様な気がして…』


社員バッジネームホルダースーツに渡ってオレは把握している。

間違いない、某大手プロダクションの関係者だ。


「いえ、確かに芸能関係ですが私はただの社員ですから。ハハッ。」


チャーンス。。。

『そーなんですかー?てっきり俳優さんかと思ってどうしようって…』


フッ、心にもない事を。まぁいい、そして…

『あの…ご迷惑だとは思いますが僕の名刺です。』


「あ、すみません…じゃ私も…。」



遂に!遂に!!遂に!!??



「あっ、でも私スカウトマンじゃないんで;」


えwwww


『じゃ何処に!何処に!!何処に居るんですかそのスカウトマンは!!??』


一斉にモブ共の視線を鷲掴んだ。取り敢えずオレは今、注目を集めている。


「あっ…そのっ…中都じゃ難しいですよ…?やっぱり帝都に行かないと…;」



オレは上京を決心した。Fly Away...